診療部長 足立 加奈子
今年はうさぎ年。30年位前、ペットショップをうろうろしていたとき、店主さんから「売れ残って大きくなったうさぎがいるのだけれど、もらってくれない?」と声を掛けられたのが、うさぎとの出会いでした。犬や猫と比べると人間との距離が少し遠いような印象でしたが、一緒に暮らしてみて、うさぎの魅力を大いに知ることとなりました。撫でてあげるとペターと平らになり、鼻をひくひく、鼻息をプスプスとさせて、喜びの気持ちを表します。こちらを呼びたいときは、「わん」とか言えないので、ケージの中で伸び上がったりぱたぱたと左右にステップしたり、アピールする姿はなんとも健気です。あくびをして、小さい口からニョキっと長い歯が見えると、普段と全く違った表情となり愛嬌者です。足の裏に肉球がなく、すべて絨毯のようになっているところも特別豪華な感じがあります。そして、まんまるの後ろ姿に、白いしっぽがちょこんとついている図柄は、Tシャツなどのデザインになるくらいで、シンプルかつ平和の象徴のように思えます。
うさぎの歯はとても鋭くて、木をガリガリと削りとるほどです。間違って指先に歯があたってしまい、かみそりのように切れてしまったことがありました。その丈夫な歯のおかげで、かたい牧草を食べることができます。ひたすら口をもぐもぐ動かし、牧草が吸い込まれていくのを眺めていると、人間にとっては到底食べられないものを好んで食べて生きている存在が、不思議に思えます。そして、人間は他の生き物の命をたくさんいただいて生きていることをつくづく思い知らされます。「いただきます」「ごちそうさま」の精神は、本当に忘れてはいけないなと思います。
すべての生き物は自然の中で生かされている存在なわけですが、歳を重ねるにつれ、地球や環境のことが心配になってきました。昨年、ビーチクリーン活動をしている方のお話を聞くことがありました。その方がサーフィンをしていると、大量のペットボトルなどのごみが海に流れてくるのだそうです。「あれを見たらペットボトルの飲み物を買おうと思わない」と言われたのが心に残りました。そういった方々の活動が後押ししているのか、海中で分解されて海に害を与えない製品が開発されたと新聞で読みました。気候の変動で作物がとれないなどニュースを聞くと、途方に暮れてしまいますが、ひとまず自分にできることからと、環境にやさしい洗剤を使っています。ウサギが暮らせる地球ならきっとヒトも暮らせるでしょう。地球の平和が増えることを願います。
(白帝ニュース 令和5年2月)