リカバリーと認知機能障害

院長 高沢 悟

新型コロナの流行が報道されてから、まる3年が経ちました。現在でも続く生活上の様々な制限の中で、私たちはいろいろなことに気付かされました。自由に心置きなく会話することが如何に大切なことか、コンサートやスポーツでの一体感がどれほど人を元気にさせるのか、そして日常を離れ旅をしたり、久しぶりに仲間と会いに出かけることがどれ程こころの安定に役立っていたかということ。当たり前のことが失われると、どんなことになってしまうのか、そういったことを思い知らされた3年間でした。

さて、認知機能障害という言葉を聞いたことはあるでしょうか?認知症という病名や民法上の「子供の認知」など、広く使われている言葉故に、心の病気での「認知機能障害」と云われても分かりにくいかもしれません。簡単に言うと、人間の精神機能のうち「感情」以外のすべての機能が「認知機能」と考えられます。私たちは、心理検査などで測定可能な領域に分けて、記憶、遂行機能、注意、学習などを測定しています。これは神経認知機能と呼ばれているもので、対人機能や他者の情動の理解といった社会認知機能の基盤となる能力です。ここには情動認知と呼ばれるHot Cognitionも含まれ、「感情以外の機能」という定義に収まらない要素も入ってきます。

統合失調症の治療では非定型抗精神病薬の普及などに伴い、治療の目的は陽性症状(余分に出現した症状)の除去だけではなく、従来からの陰性症状(意欲の平板化、自閉といった、低下欠損した症状)と認知機能障害が、社会的予後(退院した後の生活の回復度)に大きく影響することが分かってきました。これまで普通にできたこと、憶えていられたことができなくなる、当たり前のことがやれない、そういった「症状」が生活の質を大きく低下させているのです。加えて、この症状には薬物はなかなか効果を示しません。

そこで、筋力低下に運動トレーニングをするように、認知機能を訓練して回復させる治療法が考案されてきました。当院ではNEAR(Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)というプログラムをおよそ9年前から開始しています。
全国でも数10か所でしか受けられない治療法ですが、当院では継続され、NEARを体験した患者さんも結構いらっしゃると思います。 こういった認知機能改善プログラムに、デイケアやSSTなどの集団心理社会的リハビリテーションを併用すると、就労や学校、結婚等の社会参加が容易になり、本人の目指す生き方に向けたリカバリーを達成しやすくなります。つまり、当たり前の生活目標の実現が可能となるのです。
認知機能障害に有効な薬剤はない、と書きましたが、できるだけ鎮静効果の少ない薬剤を1‐2種類だけ使用することで、眠気や倦怠感から解放され、上記のリカバリーへの道は更に容易になると考えられています。

現在、犬山病院は東京の国立精神・神経医療研究センター(NCNP)を中心とする全国の多施設機関との共同研究に参加し、薬剤と認知機能改善プログラム(NEAR)の効果を実証する「治験研究」を行っています。来年からは正式なエントリーが始まりますので、ご興味のある方、NEARを治療に取り入れてみたいという先生やご家族がおられましたら、是非主治医、治験担当者までお問い合わせください。
もちろん、今のお薬のままでNEARを受けてリカバリーを実現したいと考えている方も大歓迎です。気軽にお問い合わせください。 ちなみに、上記の治験研究の名前は“VICTORY-S”と名付けられました。日常が失われても屈することなく、人生に勝利する、そんな熱い思いが込められているようです。皆さんもVICTORY-S、そしてNEARに参加してみませんか?

(白帝ニュース 令和4年12月)


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