精神科における説明と同意

副院長 鴫原 大樹

精神科でも他の診療科と同様、治療導入や入院の際には説明と同意が行われるが、例外も多い。当事者が入院に同意しない非自発的入院などはその最たるものであるが、外来診療における通院中断や自発的入院中における突然の退院希望、そして、治療者が自宅へ赴くことには同意するが服薬や治療的なアプローチには応じない訪問診療場面など、日常診療では治療同意についての例外が非常に多い。一方で、自発的な入院や服薬遵守と思われるケースでも、保護者が他界したりなどの状況の変化によって、「今までの同意撤回!」とばかりに治療に対する姿勢が豹変し、介入困難となるケースも少なくない。このようなケースを多く経験すると、同意そのものが治療なのではないかと思われてくる。

単に同意といっても内容は様々で、当事者本人が納得して同意をしているケースよりも、「こうするしかほかに方法がないからな」「同意しないとあとあと家族や治療者に責められることになっては困る」などおおよそ本人の希望通りとまでは言えずに同意が進められているケースもある。一方で、治療者サイドは、「同意が形成されれば、病院のルールや治療指針に従う患者」として当事者を認知し、その文脈で関わりを持つケースが多い。精神科治療をめぐる治療者と当事者のトラブルは、実はこの同意から生じることが殆どである。精神科治療の場面では、特にこの同意については細心の注意を払いたい。同意は書面ではない。治療者-(被)同意者、医療供給者-医療需要者という権力関係の内在を想定せず、同意をより当事者自身のものにするのがこれからの精神科治療には必要と感じている。そのために、当事者が(より主体的に、信頼感を持って)同意する力をつける環境を整えることに治療者は配慮したいと思う。
これは必ずしも、医療の現場に限ったことではない。日常生活の商業活動の場面で、顧客の立場になると、説明に対する理解の内容があやふやで、こちら側の納得を十分に引き出されないまま、「皆がそうしているから」などといった理由で同意に至る場面が少なからずある。そこに、供給者側(店側)の無言の圧力もある。今後店側がこちらの困りごとや契約変更に快く応じてくれるだろうかという不安を背にしながら商品を使いサービスを受けることにもなる。このことからも、供給側の同意者に対する同意後の心遣いも、特に治療場面では、より治療的に作用することが多いと感じる。

精神科治療の最も大事なポイントは患者-治療者の信頼関係である。これを基本として薬物療法や心理療法が成立する。大切なのは、同意を得ることは信頼関係形成の一環であるということで、同意は新たなルールを作ることではないということである。治療者としては、いつでも患者の同意についての話題を再度患者側から提起できるような心理的・物理的環境を作ることを決して怠ってはいけないと感じている。

(白帝ニュース 令和4年10月)


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