「鬼ババアという役割」

精神科医 多羅尾 陽子

もしもお母さん(もしくはお母さんに相当する養育者)をしている方に、子育ての上で子どもを叱る際、どれくらい子どもを叱っていいのかと訊かれたら、叱る時は鬼ババアになって下さいと答えます。鬼ババアというのは、とにかく物凄く怖い、恐ろしくて絶対敵わない、相手を無力化させるような絶対的な存在のことです。日本の昔話ならばやまんば、宮崎アニメでいうなら湯婆婆、ドラえもんならジャイアンのママのような勢いのある人のことです。

もちろん最初から鬼ババアでいる必要はありません。それに最初から鬼ババアでいたらどんなにエネルギーの高いお母さんも疲れ切ってしまいます。子どもに解る言葉と内容でもって、一度言っても耳に入らず、二度言っても三度言っても響かない時に初めて鬼ババアに変身すれば良いのです。
ただし、鬼ババアに変身するにあたっては条件があります。変身するということは、変身前は違う姿でいるということで、変身後また元に戻ると言うことでもあります。実は子どもを叱る際にはこのオンオフがとても大切なのです。
何故オンオフが大切なのかというと、いつもいつも鬼ババアだったらそれはただの怖い人で、そんな怖い人がテリトリーである家庭にいたら、途切れない緊張のためにお腹が痛くなったり、吐き気がしたり、頭痛が起きます。これが続くと心身症といって身体に症状が現れた状態になります。

子どもがこういう状態になってしまっている時は是非オンオフを意識してみるといいと思います。鬼ババアになるのはほんの一瞬、電光石火の如く空気を切り裂いて子どもにピリッとした空気を伝えて鬼ババアは終了、そこからはまたいつものお母さんに戻ります。もちろん急に優しくしましょうなんて言っても無理ですから、お小言は終了、お風呂、晩御飯は通常運転、くらいの戻り方で良いと思います。

ここでまだ感情が抑えられないこともあります。オーバーヒートしてしまうと《叱る》は《怒る》になってしまい、そうすると、もうお母さんはお母さんの役割から外れて、子どもと対等にやり合ってしまうことになります。これは学校の先生にも同じことが言えるのですが、役割を外れて怒ってしまうと、途端に子どもの心には響かなくなってしまいます。子どもの心には叱られたのではなく、怒られた思い出だけが強く残ってしまうのです。

でも、そんなこと実際には日常茶飯事ですよね、そんな時も後から言葉にして謝れば大丈夫です。『ごめんね、さっきはお母さんちょっと言い過ぎちゃった』子どもはどうしてお母さんに叱られたか、怒り出したのかには心当たりがあるので、この一言があれば十分に和解できます。
怒り過ぎてしまうことで悩んでいるお母さんは、鬼ババアモードは精々3分、長くて10分、それ以上は効果がないと覚えておけば、オフ時の目安になります。10分叱って響かなければ、何で怒られているのか、現時点では子どもが理解できていない可能性があります。その場合でも叱られた内容は子どもの記憶に残って、数年後に理解が追いつきます。肝心なのは、悪いことかどうかは解らなくても、これをやると鬼ババアがやってくるという瞬間の恐怖であり、お母さんという役目は鬼ババアを内側に隠していて完成形になるのだと思います。

(白帝ニュース 令和3年7月)


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