テセウスの船

副院長 杉浦 琢

最近『テセウスの船』というドラマを観ました。俳優の鈴木亮平さんの演技が好きというのもありますが、それにも増して題名が気に入りました。「テセウスの船」とは一体どういう意味なのかなと興味を持ち、ちょっと調べてみました。
ギリシャのアテネの英雄テセウスがアテネの若者と共にクレタ島から帰還した船には30本の櫂があり、アテネの人々はその船を記念にずっと保存していました。このため、朽ちた木材は徐々に新たな木材に置き換えられていき、論理的な問題から哲学者らにとって議論の対象となったそうです。すなわち、ある者は「その船はもはやテセウスの船と同じものとは言えない。」とし、別の者は「まだ同じものだ。」と主張したとのことです。

この白帝ニュースの由来である「白帝城」こと犬山城は、小牧長久手の合戦の時に豊臣秀吉が入城したそうです。歴史好きなわたしはそれを聞いて、「ああ、秀吉が400年前にここにいたんだなあ。」と感慨に耽りますが、「いやいやいろいろ改修されてるから、ここは新しい犬山城だよ。」と言われると、がっかりするでしょう。
振り返って考えてみれば、われわれ人間も同じことです。スポーツなどで壊れた筋肉は、食事として摂取されたたんぱく質などから再生されます。しかし、それは食べた肉や魚などから様々な代謝を経てわれわれの新しい筋肉として転じたものです。
それならば1年前の自分と今の自分はもはや異なるものだ、とも言えるのではないでしょうか。
しかしさらに考えるとたんぱく質や糖質を形成しているのは炭素・水素・酸素・窒素などの元素で、元素はみな同じなのだから、やはり同じではないでしょうか。
まあどうでもいい話です。

実はこういうことをあまり真剣に考えない「鈍感力」こそが、精神科疾患の予防や再燃にはとても大切だと思っています。それは精神科の病気の多くは「鈍感力」を失ってしまったことによるとも思うからです。
日常生活で必要なことと、宇宙の普遍的で絶対的な真理とはおよそ程遠いものです。かの有名な相対性理論など知らなくても日常生活を十分に行うことはできるし、なぜ車が走るのか、電車はどうやって動くのか、飛行機はなぜ飛ぶのか、など知らなくても日常生活には支障がありません。
支障がないどころか、疑問を持つと途端に車の運転や電車や飛行機に乗ることが怖くなり、当たり前のことが当たり前に思えなくなります。
わたしがもしギリシャのアテネにいって「これがあのテセウスの船です。」と言われたら、素直に感動、したいなあ。

(白帝ニュース 令和2年4月)


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