「ネズミ年にネコの話ですが…」

院長 高沢 悟

令和になって初めての新年を迎えます。世相が混乱するといわれる亥年が終わり、十二支も最初に戻り今年は子年です。ネズミだからというわけではありませんが、今回は我が家のネコの話です。

昨年のことですが、我が家の長老猫(名前は「のい:NEU」ですが…)、よりによって18歳の誕生日(11月2日)に体調を崩し、獣医さんに緊急受診となってしまいました。消化管出血が続き、受診時にHt(ヘマトクリット値:血液全体に赤血球が占める割合)が17%と極端に低く、重症の貧血を起こしていました。急性膵炎でした。胸水まで溜り呼吸困難の状態です。抗生剤投与と胸水を抜く処置をしましたが貧血が改善しません。結局、獣医さんの判断で輸血が必要ということになりました。人間では日本赤十字社が血液の供給を担っていますが、猫にはもちろん日赤はないので血液をどこかで確保するしかありません。よく獣医さんで猫や犬を飼っているのを見ると思いますが、これは緊急の輸血のための“ドナー”として飼っているそうです。

猫の血液型は3種、人と違ってA型、B型、AB型の3種、AB型は特殊で日本には殆どいません、猫種によって割合がかなり違いますが、日本の猫の9割がA型です。人間のO型に当たるA型血液を猫ではA型にもAB型にも輸血します。輸血は血液型が一致していないと拒絶反応など出現することが知られていますが、特にB型の血漿抗体は反応が強くA型血液は使えません。またA型同士でも別な抗原の関係で拒絶反応が出る場合があります。幸い老猫の血液型はA型だったので誰かにもらえるわけです。東京などでは大きな動物病院でドナー登録を行って、猫の血液バンクが存在しますが、残念ながら愛知県にはありません(宇宙航空研究開発機構:JAXAと中央大学が2018年に猫の人工血液の合成に成功しましたが、まだ実用化には至っていません)。結局、我が家には他にも猫がいるので彼(女)らから血液を採取してクロスマッチ・テストを行い、8歳未満で体重が4.5㎏以上、Htが35%以上という基準をクリアしたうち、若い方の弟猫(血のつながりはありません)の「こと」が“ドナー”に認定されました。血液は40-50ml採取しますが猫にとっては大量です(10~12ml/㎏が限界)。故に一度採取したら1週間以上は空けないといけません。それに頸静脈から採取するため“ドナー”猫も全身麻酔をするのでそのリスクもあります。しかし「こと」はよく頑張ってくれて、老猫「のい」の命の恩人になりました。「のい」は造血機能には問題なく急性の失血だけだったので、今は回復に向かって食欲も出ています。先ほどのヘマトクリット値も20%を超え徐々に上昇してきました。

我が家はこれで事なきを得ましたが、医療の地域格差を実感した出来事でした。また、輸血には大変お金がかかりました。私は民間の動物保険に加入していたので助かりましたが、アメリカのように経済的に恵まれていなければ医療を受けられない状況になることも実感しました。日本の国民皆保険、高額医療費控除といった制度の素晴らしさを改めて感じます。
当院では基本的に輸血は行いません。拒絶反応などの副反応などに対処する医療設備がなく輸血治療の経験値も低いため、輸血が必要な場合は連携している近隣病院にお願いをしています。人間ならこういった血液供給システムが確立し、また、それ程経済的なことも考えず医療機関にかかることができます。猫の場合は、血液バンクなどの有無など著しい地域格差があり、どんなに飼い主さんが愛情を注いでいても、地域によって輸血治療が出来なかったり、治療費を支払えないなどに理由で治療を断念せざるを得ません。しかし人間も、今後、国の財政が厳しくなって窓口負担などが増えて行きそうですし、国民皆保険の維持も困難になるのではと危機感が強まっています。現在でも医師の地域偏在によって、同じ国民でありながら同じような質の医療を受けられるとは限りません。
精神科医療はどうでしょうか?救急システムに関しても更に地域差が著しく、社会的・経済的弱者でもある精神障害の方やその家族に対してのセーフティーネットはどれ程頼りになるものなのでしょうか。
自分たちの医療が良いかどうかはサービスを受けるユーザーが決めることなのでその評価は委ねるとして、せめて、「ああ、ここに住んでいてよかった」と思ってくれる病院に、街にしてゆくように、今年も努力を重ねて行こうと気持ちを引き締めています。皆様、今年1年も宜しくお願いいたします。
ちなみに、ネコの血液型と性格には関連はないそうです。

(白帝ニュース 令和2年1月)


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