担雪埋井(たんせつまいせい)

副院長 杉浦 琢

「担雪埋井(たんせつまいせい)」という言葉があります。臨済宗の僧、白隠禅師の言葉です。
「人の努力というのは、井戸の中に雪を放り込んで埋めるようなものだ」ということを表していると言われます。井戸の中に雪をいくら懸命に運んでも融けてしまって井戸はいつまで経っても埋まらない。一見愚かな行為を指しているようですが、人が何かを求めて努力しても、なかなかうまくはいかない、人生とはそういうものだ、ということを説いていると言われています。
あるいは、報われることは少ない、うまくいくことなど稀だ、たとえ雪で井戸を埋めることができなくても、雪を運び続ける努力を怠ることなく続けることが大切なのだ、と教えているという解釈もあります。
この言葉は教育の心得などにも用いられるようで、山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」もほぼ同義の言葉とされており、これも有名です。教育というものはそれほど根気がいるものなのでしょう。

しかし、この「担雪埋井」という言葉はそういった教育のための言葉ではなく、自分の生き方の極意、という異なった解釈もできると思います。
雪国で暮らしたことのある人は分かると思いますが、雪国では大雪が降った日、その日の内に雪かきをしないと「根雪」になってしまい、固く凍ってしまいます。そのため急いで雪かきをしなければなりません。その時、雪かきをしている人々はまさに目前のことに集中しています。そして「我」を忘れて夢中になっています。雪かきをしている人を見ても、自分で雪かきをやっていても、とても清冽な精神状態です。

雪かきには目的があります。しかし、やっていると分かりますが、もう止められなくなります。まさに「担雪埋井」状態です。
「我」の産物である一切の目的をうち捨てて、ただひたすら「いま」すべきこと、せずにはいられないこと、目の前に在ることに打ち込む、これが努力の秘訣なのだ、と説いているのではないでしょうか。
こういった禅の教えを解釈することは、不遜で無意味にも思えますが、これが未熟な私の現時点での理解です。また異なる解釈があれば教えて頂きたいと思います。

もうひとつ。「有言実行」という「不言実行」から造られた言葉があります。「達成できないことをおそれて何も言わないでやるよりも、周囲に公言してからやる方がよい」という解釈をしている人もいます。確かに「有言」は動機付けとしては有効でしょう。
しかし「不言」とは動機付けや達成できない時の逃げ道にしているのではなく、やはり「ただ黙って目の前に在ることに打ち込みなさい」という深い精神性のことを言っているのではないでしょうか。
このように含蓄ある言葉が、表面的なビジネス用語として解釈されていることがあります。「情けはひとのためならず」はどうでしょうか。日頃使っている言葉を見直し、よく生きるための糧にできたらいいですね。


(白帝ニュース平成28年8月)


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