温泉療法について
病棟診療部長 黒川 淳一

 
今年度より、病棟診療部長を拝命しました黒川です。これからも変わらず、「ニコニコ みんなで 健康」をモットーに診療して参ります。よろしくお願い申し上げます。

今回、お話しするテーマは「温泉」についてです。
そもそも温泉とは何でしょうか?簡単に言えば、水がいくらかの熱をもっており、何かしらの成分が含まれているものが温泉、といったことになろうかと思います(1:日本温泉気候物理医学会発行. 温泉医学 教育研修会講義録. 1990)。現在の日本では「温泉法」(昭和23年)というものがあり、これに従うところ、源泉から採取される際、水の温度が25℃以上であること、ないしは指定された約20種類程度の物質のうち、規定された量を超えて何か一つの成分でも含有していれば良いことになっています。極端な言い方をすれば、だいたい100m掘り進むと、それだけで地温が2.3℃上昇するため、平均気温が17℃程度の場所で500mも掘りすすんで水脈にあたれば、だいたい地下水はその時点で25℃を超えることになります。この水が、何ら成分を含有していなくても狭義には温泉、ということになります(2:松田忠徳. 光文社新書. 温泉教授の温泉ゼミナール. 2001)。
しかし、そういった細かな定義に縛られなくとも、私たちは古くから温泉の効能を経験的に知っていました。温泉の効能を利用して治療行為を行うことを「温泉療法」といいます。我が国では大穴むじの命、小名昆古那の命が温泉療法の開祖とされています。その後、神功皇后が韓国遠征の戦傷兵を嬉野温泉(佐賀県)で療養させたという記録が残っているほか、徳川時代には後藤艮山が城崎温泉(兵庫県)での入浴法について言及した記載を残していること、貝原益軒が温泉療養に言及している(飲泉にまつわる注意事項)ことなど、医療と温泉との深いかかわりを今に知ることができます。同様の動きは西欧でも記録が残されており、古くはヒポクラテスが温泉の飲用と入浴にまつわる記載を残していることなどが伝えられています(参考文献:1)。最近では、「テルマエ・ロマエ」(3:ヤマザキマリ. エンターブレイン.2008)という古代ローマにおける入浴コメディー漫画(映画化)もあって、より身近なものに感じている方は多いかもしれませんね。そして、ドイツでは1879年当時において、既に温泉療法にまつわる学会が開催されるに至っています。現在繰り広げられている西洋式の、薬物を中心とした治療が医療現場では幅を利かせてはいますが、実は西欧にも、古くから温泉療法に関する知見の積み重ねがあったようです。
我が国では1935年に「日本温泉気候医学会」が創設され、現在に至るまで温泉療養にまつわる研究が行われています。例えば温泉で得られる浮力を利用した歩行訓練や呼吸器リハビリテーション(岡山県三朝温泉など)、アトピー性皮膚炎に対する酸度の強いお湯での除菌(群馬県草津町)といった治療が実際に繰り広げられています。我が国におけるリハビリテーション医療の黎明期にあって、多くは「温泉病院」などで療養生活が支えられてきました。傷痍軍人向けの療養病院に温泉が併設されていたことからも、当時の様子を伺い知ることが出来ます。
これまでの研究成果から、温泉療養では外傷や整形外科的疾患に限らず、関節リウマチや喘息、アトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患や、動脈硬化性疾患全般や循環器疾患、心身症などのストレス性疾患にみられる症状緩和について、幅広い効果が期待できることが証明されてきました。薬物用法に偏りがちな現在の医学に対し、薬物療法では補いきれないものを補完する手段として期待される部分が温泉療養には多いと考えられています(4:日本温泉気候物理医学会発行. 新温泉医学. 2004)。
こういった温泉にまつわる効能や知見は、今後、精神科医療においてどこまで証明されるのでしょうか。今の所、統合失調症や躁うつ病といった精神疾患そのものに対する治療効果を十分証明するところまでは到達していません。一方で、予防医学的観点からの効能や、健康増進としての役割については期待されるところが大きいとされています。温泉での療養・保養を通じて健康増進や生活習慣病・職業病の予防、疲労回復と共にストレスの軽減に寄与する所が大きいと証明されれば、その価値は益々高まるでしょう。
残念ながら温泉の湧出をみるまでには至っておりませんが、当院には「展望風呂」なる大浴場があり、多くの入院患者様にご利用頂いております。通り一辺倒の薬物療法に傾倒するでなく、相補・代替医療など様々な手法も取り入れながら、療養生活を通じて、患者様の苦痛を少しでも緩和できるよう、工夫や研究を進めていきたいと考えております。

(白帝ニュース平成26年6月)


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