安全・安心な精神保健医療福祉を皆様と共有するために
-セルフ・メディエーションの実践に向けて-

副院長 井上眞人

昨年12月の白帝ニュース巻頭言「医療機能評価受審を終わって」にて、当院院長より、公益財団法人医療機能評価機構による評価更新の受審について紹介がありました。医療機能評価機構の認定病院患者安全推進協議会の部会では、「医療メディエーション」という概念について検討がなされ、「複雑な医療現場の対話過程に関して、第三者機関での紛争解決を目的とした」考え方から、医療機関の内部においても「事実の公正な検証と共有過程」が可能となるよう、議論が進められているそうです。医療メディエーションとは、医療機関利用者の皆様と医療者側の「対話」を促進することを通して、情報共有を進め、両者の認識が大きくずれてしまわないよう、予防・調整を支援するもので、私たち医療従事者同士のコミュニケーションも含まれます。さらに、「セルフ・メディエーション」という概念も重視されています。解決を迫られている問題の「当事者としての自分」に対して、客観的に相手側と自分自身を俯瞰的な視点から眺める「仲介(メディエート)にあたる自分」を想定して、相互に尊重し合って聴く姿勢と構えを育てていくものです(和田仁孝,ら著:医療メディエーション―コンフリクト・マネジメントへのナラティヴ・アプローチ-.シーニュより)。
客観的に俯瞰的な視点から眺めるという想定から、当院で勉強を始めさせて頂いた頃、「神田橋條治著:精神科診断面接のコツ.岩崎学術出版」という教科書に、「空中に浮かぶ自分の眼球というイメージ」という表現で、面接をしている自分を観察している治療者自身のイメージが表現されていたことを思い出しました。
また、一昨年11月、認知療法学会・認知療法研修会において、「日々ストレスを感じており、それを何とかしたいと考えている臨床家の受講を歓迎する。」という言葉に誘われて、洗足ストレスコーピングオフィス:伊藤絵美先生による、「ストレスマネジメントに活かす認知行動療法の発想とスキル」講座を受講した際、当院外来にても実施されているマインドフルネス認知療法についての指導があり、「今」この瞬間の現実に常に気付きを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情には捉われないでいる、心の持ち方、存在の有無、自分の反応をリアルタイムで観察し、かつその反応を評価せず、(否定もせず、鵜呑みにもせず)、ただそのまま眺めたり受け止めたりすること…失敗をした自分を見ているもう一人の自分の存在…自己観察(セルフモニタリング)の重要性について学びました。
自分が「メディエーション」という概念に関心をもったのは、某司法機関でのメンタルヘルス講習を担当した折り、参考になった「ナラティヴ・メディエーション―調停・仲裁・対立解決への新しいアプローチ. (G・モンク,他編/国重浩一,他訳:北大路書房)」という本に、当院でも現在取り組んでおります「認知行動療法」の技法にもつながる「ナラティブ・セラピー」との関連について示されていたことからです。ナラティブ・セラピーの「ナラティブ」は、「外在化する対話」として位置づけられ、“問題が問題なのであって,人は問題ではない”というモットーのもと、治療が進められています(小森康永著:ナラティヴ実践再訪.金剛出版)。
メディエ-ションは、医療だけでなく、教育の現場でも活用されています。「ピア・サポートによるトラブル・けんか解決法!(池島徳大:監修・著,本の森出版)」に楽しい動画が披露されていますが、「こども同士でトラブル解決できるクラスをめざそう…“けんかのないクラス”ではなく“話し合いで解決”を目標に!」と記され、「ピア・メディエーション」という表現で、「話し合いのルール」を守って、子供たち自身がお互いの話し合いで問題を解決できるように導く例が示されています。そこでの「話し合いのルール」は、①正直に自分の気持ちを話す、②しっかりと相手の話を聞く、そして、③相手の言葉を決してさえぎらない、の3項目でした。これは、当院でも、吉田弘道名誉院長の指導のもと取り組んでおります、生活臨床を基盤とした「生活技能訓練(SST)」、そして現在、高沢副理事長を中心に準備が進んでおります、「社会認知ならびに対人関係のトレーニング(SCIT)」にも、通じるものと考えられます。
前述の「ナラティヴ・メディエーション」では、意図するところとして、「当事者の合意という結果を直接目指すのではなく、合意が生まれる可能性を増大させる土壌をつくりあげることを目指す」とも記されています。それには、援助実践の現場において葛藤を覚えたとき、援助サービス利用者の方々と、私たち援助者自身の反応をふり返り、書き起こして、お互いの関係に気づきを得ることができる「プロセス・レコード」が活用できそうです。私たちが向き合う課題に対して、自らを客観視し、周囲の方々と情報の共有を図ることで、効果的な解決の道筋が幾重にも拡がっていくように感じます。
医療法人桜桂会では、精神保健福祉業務に携わる各部門のスタッフが連携し、ご利用者の皆様との対話を通して、安全・安心な地域精神保健活動に取り組んでまいります。今後とも、お力添えをよろしくお願い申し上げます。

(白帝ニュース平成26年2月)


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