精神科医療もコラボレーション時代
副理事長 高沢 悟

皆さんは「べてるの家」という名前を聞いたことがあると思います。およそ30年近く前から当事者主体の生活ネットワーク活動を続けている団体ですが、今年平成25年の4月18日から20日の3日に渡って、この「べてるの家」のある北海道日高地方の、人口わずか14,000人弱の町に過ぎない浦河町で「第8回日本統合失調症学会」が開催されました。4月半ばでも朝の気温は氷点下近く、時にみぞれまじりの天気の中、千歳空港からバスで2時間半というアクセスの町に、500名近くの参加者が訪れ、予想を遥かに上回る盛況のうちに会を終えました。
この地での開催は「統合失調学会」の理事長、前松沢病院長の岡崎祐士先生の強い希望があったということですが、生物学的なアカデミック研究に比重のあるこの学会が「べてるの浦河」で開催されたということはとても象徴的なことだったと思います。テーマとされた“共に生きるを考える”の通り、副会長の浦河日赤の川村敏明先生、北海道医療大学の向谷地生良先生初め、べてるの関係者が多くプログラム委員に連なっていました。学会副理事長の丹羽真一先生の特別講演では、学術領域の研究も今では当事者との共同(コラボレーション)で進めて行く時代になったことが何度も強調されていました。従って、学会のプログラムも基礎的な内容のシンポジウム、例えば“遺伝子特性-創薬の種の最前線”、“iPS細胞を用いた統合失調症の研究”といったものから“統合失調症をもつ人の子育て-育ての経験、育ちの経験、支援の経験-”“元祖当事者研究、べてる式”といった具合で、最先端の生物学的発表、科学的実証にもとづく心理社会的研究の発表と幅広く、当事者の発表も約3割ほどはあったと思います。海外からもノッティンガム大学のジュリー・レッパー先生から組織的なピア・サポート・ワーカーの導入の実地報告がなされ、医療関係者と当事者のコラボレーションが日本ではまだ立ち後れていることが示されました。懇親会でも、笠井先生(東大)、村井先生(京大)、尾崎先生(名大)をはじめ各大学の先生方や、精神神経センターの樋口先生、先の岡崎先生などと一緒に「べてるの家」のメンバーや患者さんのご家族、ボランティアの方を含む様々な職種の方が一緒に歓談する光景が見られ、確実に時代が変化している実感が持てました。
べてる発の“当事者研究”が全国(海外にも)広がりを見せている一方で、日本では当事者とのコラボレーションは遅々として進まず、「病院から地域へ」というスローガンが叫ばれている割にはなかなか浸透していかないのが現実です。特に日本においては、過去の精神医療の施策の過ちから、あまりに公的システムの構築が脆弱なうえ、安易に民間病院に依存した結果未だに長期入院者を減らせない状況が続いています。今後少子化、人口減少、超高齢化が進む我が国で一体どのような精神医療の健全化と発展が可能かという重い課題を、今回改めて突きつけられた思いでした。しかし、「べてるの家」にしても最初から今のような活動があった訳ではありません。それこそ何の資源もないところから、退院した一人の患者さんをどう支えようかという問題に対する工夫とチャレンジの結果、困難を乗り越え修正を経て今の形になってきたといいます。幸運な出会いはあったとはいえ、そこには創意と努力、諦めないタフネスがあったといえるでしょう。
さて、昨年「病院・地域精神医学会愛知大会」の主幹、事務局を担った犬山病院ですが、当院での地域医療に対する意識、イメージはどうでしょうか。また、患者さん、ご家族とのコラボレーションという点ではどうでしょうか。チーム医療の必要性も重要さももちろん解ってはいても、どうしても現場の様々な個別性や状況によって諦めてしまう、また前例のないやり方にどうしても足が一歩出ないということはありませんか?私は今回の学会に参加して一番感じたこと、それは「患者さんでも、我々でも、希望を持っていると人は生き生きする」ということでした。最終日のランチョン・セミナーでは、家族としての体験と同時に、ご自身が精神科医でもある夏苅郁子さんの体験をお聞きしました。やはり今でも「統合失調症」という“事態”は単に医学的な問題だけにとどまらない多くの衝撃を持ち続けていると実感しました。このセミナーのサブ・タイトルはこういったものでした。「誰もが自分の人生の当事者」。私たち全員が偏見やとらわれから“リカバリー”していかなくてはならないと思います。

 

(白帝ニュース平成25年5月)


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