これから先は?
院長 井上泰弘

これから日本の精神医療そして犬山病院はどのような方向に進んでいくのか、進むべきなのかを私なりに考えています。統合失調症などの精神病を収容第一主義で取り扱っていた時代はすでに過去のものとなりました。しかしまだ完全に終わったわけでもありません。相変わらずこの病気で長期入院を余儀なくされている人たちがたくさんおられます。また一方では薬剤や治療法の進歩によって入院期間はずっと短くなりスッキリと治ることも多くなりました。不本意に長期入院になってしまっている方への対処とこれからそうならないように防いでいくべき方への対処が両面的に重要となっていく時代です。
今どんどん増えているのは認知症と働き盛りの方のうつ病です。
まず認知症では今の日本が抱えている「少子高齢化」という問題は認知症のお年寄りがどんどん増えているところに最も顕著に現れています。当院の外来にも以前に比べると格段に多くの患者さんがやってくるようになってきました。今はアルツハイマー型認知症に対して「抗痴呆薬」と言われる薬が何種類か開発されています。しかしまだまだ効果は限定的であり副作用の問題もあるようです。認知症でご本人や家族が最も悩まれるのは単なるもの忘れより夜間せん妄による徘徊などの異常行動、不眠や興奮、妄想などの言動異常などいわゆる認知症の「周辺症状」です。物忘れや日常生活上の困難などは適切な介護で対処できることが多いのですが周辺症状が激しくなって介護への抵抗や暴言、暴行が激しくなると専門の施設でも対応できなくなります。すると当院などに依頼されることが多くなりますが高齢者は様々な身体疾患を抱えておられることが多くいつも対応に苦慮させられます。またご高齢の方は病の経過も若い人とは違うことが多く本人や家族の思いとは違った結末になることもあります。それをどうやって納得していただけるかも大事なところです。
働き盛りの方のうつ病は現代日本の大きな問題の一つと言えるでしょう。自殺者が年間3万人を超えることが社会問題視されるようになってから随分経ちます。経済的困窮と絡めて論じられることが多いものですが自殺の背後にはうつ病やうつ状態がある場合がほとんどであろうと思われます。
元来日本は非常に社会的な要求水準が高く過度に緊張を強いる特徴があります。また集団主義的であり悲観的な見方や考え方が支配的となりやすい社会です。そのような社会の中では真面目で一生懸命、良心的で他人に配慮しすぎるタイプの人は仕事やストレスを抱えれば抱えるほど自分の時間を削ってでも頑張ってしまい、睡眠時間を減らしてでも仕事をします。このように本来有能な人たちがそのために病気に陥りやすいというのは悲しいことです。しかし幸いにうつ病に対する世間の理解はかなり進歩しています。当院でも犬山認知・行動科学センターを立ち上げ、より総合的な治療の推進を目指していますがこれらの新しい治療法への関心も高いようです。しかし何よりも大切なのは予防であり、社会全体に心のケアの重要性が見直されてきている今こそそれを推進できるいい機会だと思います。
もうひとつの流れはACTやアウトリーチなどの地域ケアです。従来ではとても退院が無理と思われていたような患者さんを様々な職種の専門家が共同して地域で支えていくという試みは各地方で少しずつですが広がりをみせてきています。日本は世界で最も精神病床数が多く、入院中心主義・収容主義などとの批判を受けてきました。国は大幅な病床数削減目標を掲げて地域ケアの推進を働きかけてきましたが現状はほとんど進んでいません。その中で出てきた地域ケア重視の動きですが、これも現場の人々の涙ぐましい努力に支えられているような部分が大きく、欧米のような広がりをみせるのかどうかは未知数です。障害者関連の施設を作ろうとするとすぐに反対運動が起きるような日本の風土ではかなりむつかしいのではないかと私はどちらかというと悲観的ですがこれからの大事な課題であることは間違いありません。

(白帝ニュース平成25年4月)


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