新しい年を迎えて
理事長 吉田 弘美
 
去年は法人においても、また病院においても様々なことがありました。まず、病院は春に副理事長・副院長として高沢悟先生の赴任、そして初夏に院長の交代、多年にわたり院長職を務めていただきました、加藤荘二先生から井上泰弘先生が院長職についていただく事となりました。加藤先生におかれましては、本当に長い期間お疲れ様でした。そしてありがとうございます。
新しい体制がスタートし、法人で運営事務局を開き、ほぼ1年前からの予定であった、日本病院・地域精神医学会を10月13日に無事開催することができました。私も学会長なるものをさせていただき、少しだけお手伝いをさせていただきました。本当に何もしていない私をしり目にあれよあれよと会が進んで行ったのは、当法人の職員の優秀さに他ならないという賛辞を外の人からも多くいただきました。本当に嬉しい事です。そしてつくづく感じたのが人の力です。人が集まるとそれは、とてつもない力になるという事を身をもって体験できました。多くの人と知り合うことが出来たのもとてもうれしい事でした。皆さん本当にご苦労様でした。そして、ありがとうございました。私はとても楽しかったです。
さて、そんなこんなで慌ただしかったのですが、それなりに色々と勉強もさせていただきました。そして、少し気になったことをここからは書いてみようと思います。
ヨーロッパのカソリック教会で「本を閉じ、ろうそくを消し、鐘をならす」といえば、これは破門の行為を示した意味になる。聖書を閉じ、ろうそくを消せばそこは暗闇、悪霊の世界となる。そして破門された者の、魂の死を告げる鐘が鳴らされる。教会は信徒の団体、共同体であり、つまり人の体にも例えることが出来る。破門はそこからの排除・抹殺であり、切除されるという事である。異物として扱われ、打ち棄てられたとしても構うものはいない。
中世ヨーロッパではこの教会による破門はとても政治的な効果を発揮したほどです。法王グレゴリウス7世によるドイツ王ハインリッヒ4世の破門つまり、カノッサの屈辱に始まり、あのナポレオンも法王ピウス7世から破門され、その後、両者のいざこざはナポレオンの失脚まで続いたほどです。中世ヨーロッパでは倫理・道徳にそぐわないと王様ですら排除されてしまったわけです。でも、よく考えてみるとこの破門、手術の手法と似ていませんか。病魔に冒された体の悪い部分を切除し、他の良い部分に広がるのを防ぐのが手術です。かのジャンヌ・ダルクも「汝が腐敗した枝としてキリストの他の枝を汚染せぬために」とされ、処刑されたのです。総合的な政治権力や、効果的な物理的強制力が未完成であったが故の破門、そして西洋医学にも生きるために切り捨てるという、つきつめた心が働いていたのだと思います。ところが、ヨーロッパ中世から数百年を経たこの現代、日本の状況はどうでしょう。昨今の社会の空気や学会を通して感じたのは、とても安易に異端、異物扱いをして切り離そう、切除しようとしてはいないかということです。もともと琵琶法師に按摩、といった障害者でも生きやすい社会を作っていたはずなのに、どうしてしまったのでしょう。中世ヨーロッパのような過酷な生活環境や政治環境の故に成立したのが、破門や外科の切除術という手法です。今から私たちが進むべき方向はここではありません。先にも書きましたが人は集まれば力になると書きました。しかもこの人は様々な価値観を持った人たちをさすのです。なぜなら、そのほうがにぎやかだし、楽しくはありませんか。
少し前ですが、日本の美ってなんだろうと考えていたことがありました。そんな時、テレビでニューヨーク在住の日本画家、千住博さんという方が「日本の美しさとはなんでしょうか。」と聞かれたとき彼はこう答えました。「それは、静けさと華やかさの共存だと思います。静けさと華やかさが一緒になっている美しさは他の国にはありません。」という答えにまさにその通りだと思いました。夜のしじまに、桜の花びらはらはらと散る美しさ、凛とした霊峰の美、深々と降る雪の夜、立ち去っていく後姿の男がさしている和傘の鮮やかさ、などは「鬼平犯科帳」の世界です。しかし,この頃といえば、雪まで音をたてて降ってきそうな世知辛い世の中です。もう少し、ゆったりと、気楽に、そして優しくあっていいのではありませんか。自分が成長しようとするあまり自分が見えなくなっていたりしませんか。私は今年も徳を積むより、惚れた人間をたくさん作りたいと思っています。ここまで読んでくれてありがとう。

(白帝ニュース平成25年1月)


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