ケストナーには及びませんが、小さな人生処方箋

理事長 吉田 弘美

6月をもって13年間の長きに渡り院長職を勤めてくださった、加藤先生が院長職を辞されました。そして新たに井上泰弘先生が院長職を継承していただくこととなりました。三代目の院長の誕生です。その前の4月には高沢先生が副院長、副理事長に就任していただきました。この新しい体制でこれからもしっかりとした医療サービスを提供していけるように色々な企画を発信していこうと考えています。どうか皆さんも楽しみにしていて下さい。

 さて、相変わらず世間は何となく落ち着きなく不安定な様を呈しているようですが、こんな時にこそ必要なのが音楽や芸術ではないかと思います。世知辛い世の中に一服の清涼剤のように心や魂を潤してくれるものが誰にだって必要でしょう。枯れてしまうことがないようにしないといけません。私がどうやってそれらを楽しんでいるか、少しお話ししたいと思います。
もともと生来おっちょこちょいで脳天気なほうではありますが、生まれついての楽天家ではありません。今の自分が楽天的なのは後天的に獲得したものだと思います。そう、例えば「フィガロの結婚」で、伯爵が、それはそれは楽しそうにしている領民を目の当たりにした時に彼は、こう質問します。「誰がお前達にそんな陽気な哲学を授けた?」…と。その時の領民の答えがこうです。「これも貧乏のなせる技ですな。」…と。人はそこそこの不幸に遭遇している時が一番問題なのだと思います。卑屈になったり自棄になったりイジケタリもします。自分の事しか目に入りません。伯爵の受け取った返答は、ただ単に不幸に遭遇してきただけでなくそれこそ限りない絶望の淵を乗り越えた末にたどり着いた者の言葉だと思います。だから、いい年をした悲観主義者をみると、その人はとても満ち足りた平和な人生を送ってこられたんだなと思います。安逸や平和を求めるあまり絶望を回避する人生は楽しいのでしょうか?
次は、「ロミオとジュリエット」、そうシェークスピアです。有名なロミオの台詞です。敵対する家柄の間に花開いた恋のお話の中で、ロミオはジュリエットの名前、つまりその家柄が敵だといいます。その時のジュリエットの言葉がこうです。「名前がどうしたというの。私たちがバラと呼んでいる花は、ほかのどんな名前で呼んでも、おなじようにいい香りがするわ。」……と。名前なんかはどうでもいい、家柄や身分、財産や名誉、そうした見てくれのものよりも、相手の当人を信頼しきっているジュリエット。虚よりも実を取る態度の気持ちよさは他にあるでしょうか。
「おぎゃあ」と生まれた赤子は何も名前がありません。自分のまわりには360度の視界が開かれていたはずです。それが年を重ね色々な名前が付くたび視界は徐々に狭められたはず。私はこんな現代だからこそ相手を信頼し虚より実で付き合っていきたいと思っています。でも、なかなか手ごわいものです。名前や名称に侵された大人たちは……。
どうでしょう、楽しいでしょう。昔、楽しんだ作品やこれから出会う作品の中にちょっとした人生の処方箋を見つける作業。みなさんも、ぜひ御自身で今の自分にぴったりの処方を見つけてください。自家処方でもこれは大丈夫なはずですから。

(白帝ニュース平成24年7月)

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