日本うつ病学会の双極性障害治療ガイドライン

院長 加藤 荘二

東日本大震災の発生から約5ヶ月経過しましたが、瓦礫の処理が遅れたり、お盆までに希望者全員仮設住宅への入居を完了させるという目標も達成できないなど、復旧・復興の遅れが目立ちます。福島原発についても、政府は工程表の第一ステップは達成できたと発表していますが、放射性汚染水を浄化して原子炉冷却に使う循環注水冷却システムがしばしばトラブルを起こすなど、依然不安定な状態が続いています。また放射性物質の拡散は、牛肉のセシウム汚染が問題になっていますが、それ以外の物にも及んでいることは容易に想像できます。明るい話題といえば「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝ぐらいでしょうか。
さて今回は、今年の3月に日本うつ病学会から双極性障害の治療ガイドラインが発表されましたのでそのサマリーを紹介します。
(1) 躁病エピソードの治療
最も推奨される治療 •躁状態が軽度の場合 → リチウム
•躁状態が重度の場合 → リチウムと非定型抗精神病薬(オランザピン、アリプラゾール、クエチアピン、リスペリドン)の併用
次に推奨される治療
•躁状態が軽度の場合 → バルプロ酸、非定型抗精神病薬(オランザピン、アリプラゾール、クエチアピン、リスペリドン)
カルバマゼピン
•躁状態が重度の場合 → バルプロ酸と非定型抗精神病薬の併用
その他の推奨されうる治療
•気分安定薬2剤以上の併用
•気分安定薬と定型抗精神病薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、レボメプロマジン、チミペロン、ゾテピン)の併用
•電気けいれん療法
推奨されない治療
•ラモトリギン、トピラマート、ペラパミルなど
(2) 大うつ病エピソードの治療
最も推奨される治療
•クエチアピン
•リチウム
次に推奨される治療
•オランザピン
•ラモトリギン
その他の推奨されうる治療
•リチウムとラモトリギンの併用
•電気けいれん療法
推奨されない治療
•三環系抗うつ薬の使用
•抗うつ薬による単独治療など
(3) 維持療法の治療
A 薬物療法
最も推奨される治療
•リチウム
次に推奨される治療
•オランザピン ・ラモトリギン
•リチウムまたはバルプロ酸とクエチアピンの併用
•リチウムとラモトリギンの併用
•リチウムとバルプロ酸の併用
•アリピプラゾール バルプロ酸
その他の推奨されうる治療
•カルバマゼピン
•リスペリドン持続性注射剤(充分な心理教育を行ってもなお服薬不遵守の患者)
•上記以外の気分安定薬同士あるいは気分安定薬と非定型抗精神病薬の組み合わせ
•甲状腺ホルモン剤
推奨されない治療
•抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)の使用
•抗うつ薬単剤での治療など
B 心理社会的治療
推奨される治療
(いずれも薬物療法との併用)
•心理教育
•対人関係 ― 社会リズム療法
•家族療法
•認知行動療法
推奨されない治療
•薬物治療なしに、心理社会的治療単独での治療
ただし上記の薬剤には保険適応外のものが多くありますので注意が必要です。(ラモトリギンは7月より双極性障害にも保険適応されています。)
このガイドラインが発表された直後より、抗うつ剤の減量、中止を最優先にして双極性障害の方の処方の見直しを行っていますが、なかなか思い通りには進みません。双極性障害の治療における抗うつ剤使用の是非については長年議論されてきました。最近では躁転(軽躁転を含む)のリスク、衝動性亢進のリスク、ラピッドサイクラー化のリスクなどから使用に否定的な意見が多数を占めるようになりましたが、完全に否定された訳ではなく、最終的には医師の判断でケースバイケースで対応することになります。抗うつ剤が投与されて長期間安定した状態を維持している方については、ゆっくり慎重に減量していくつもりでいます。また処方を見直す中で、双極性障害における抗精神病薬の効果やその至適量には個人差が大きいことを改めて感じています。尚このガイドラインにおいては、薬剤の副作用、特に長期投与のリスクが過小評価されているのではと感じています。
このガイドラインは日本うつ病学会のホームページで公開されており、誰でも見ることができます。治療をスムーズに行うには、患者さんやご家族の皆さんにも知って頂いたほうがよいと考えたため、今回紹介致しました。

(白帝ニュース平成23年8月)


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