保護者制度の見直し

院長 加藤 荘二

まずこのたびの東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。今回の災害は死者、行方不明者2万8千人以上と戦後最悪の大災害で、3月末の時点でも24万人以上の方が不便な避難生活を余儀なくされています。地震の規模はマグニチュード9.0、津波は場所によっては15m以上と、「想定外」のもので、自然の猛威に人間はなす術はありませんでした。精神科病院の被害も甚大で、建物が損壊したり、津波に襲われたりした病院が相当あるようですが、未だ連絡がとれず孤立状態にある病院もあり、被害の全体は把握できていません。精神科病院の職員は、電気、ガス、水が止まり、食料や医薬品の供給もないという過酷な状況の中でも患者さんの生命と安全を守るために必死の思いで頑張っています。これにはただただ頭を下げるしかありません。一日でも早い復旧・復興を願い、できる限りの支援をしたいと思っています。ただこの地震は「千年に一回」の、「想定外」で極めて稀なものと言われていますが、日本人の平均寿命が80年を超えていることを考えると、私達がこのような大災害に遭遇する確率は決して低いものではないのではと感じています。
福島の原子力発電所の事故も深刻で、いまだ危険な状態が続いています。これは原子炉の冷却装置の電源が津波によって破壊されてプールに注水できなくなって爆発したようですが、電気が回復しても装置が簡単に作動するとはとても思えず、解決の目途は全く立っていません。原子力発電所は、最先端の科学技術を駆使して最も厳格な安全管理、危機管理が為されているものと思い込んでいたため、津波で予備の電源が破壊されたら後はひたすらホースで注水するしかないと聞かされても、にわかには信じられませんでした。またこのような事態に陥る危険性は国会などでも度々指摘されていたようで、原子力安全委員会の委員長も先日「想定の甘さ」を認めています。放射性物質の拡散は、水、農作物、魚介類などにも及ぶため、原発周辺の人だけでなく、いずれは日本全体に大きな影響を与えるはずです。この原発事故による国民の精神的なダメージも大きく、日本の復興に大きな妨げになることは間違いありません。
このあまりに大き過ぎる災害と事故は、直接被害を受けていない私たちの日常感覚まで一時的に麻痺させてしまいました。普段の業務になかなか集中できず、医療安全、感染対策など重要な問題にでも気が緩みがちになったりしていましたが、ようやく平常心を取り戻しつつあるところです。
最後に保護者制度の見直しについて簡単に述べておきます。厚生労働省の「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」は、昨年10月より同チームの下に「『保護者制度・入院制度の検討』に係る作業チーム」を設置して保護者制度の見直しの議論を進めています。保護者制度は精神保健福祉法に特別に設けられた制度で、同法においてその役割は以下のように規定されています。
(1) 任意入院者及び通院患者を除く精神障害者に治療を受けさせること
(2) 精神障害者の財産上の利益を保護すること
(3) 精神障害者の診断が正しく行われるように協力すること
(4) 任意入院者及び通院患者を除く精神障害者に医療を受けさせるに当たって医師の指示に従うこと
(5) 回復した措置患者を引き取ること
(6) 措置入院から退院した精神障害者の引き取りの際、精神科病院の管理者や施設長に相談したり、必要な援助を求めたりすることができること
(7) 通院患者の公費負担の申請ができること
(8) 医療保護入院の同意をすることができること
(9) 退院請求や処遇改善を都道府県知事に請求ができること
このうち(1)から(6)については、2月の作業チームにおける議論では、家族の負担が大きいことなどを理由に、医療者側も含めて「廃止」の意見が多数を占めていたようですが、今後さらに検討していくことになっています。
昨年6月29日の閣議決定では、「精神科への非自発的入院について、保護者制度の見直しなどを含め、そのあり方を検討し、平成24年を目途に結論を出す」とされています。非自発的入院(特に医療保護入院)と保護者制度はセットで考えるものであり、保護者の役割を上記の方向で見直すことは、医療保護入院を抜本的に改正することにつながりますが、そのために行政の関与が増えたり、逆に現行より「強制的」で「管理的」なものになってしまう可能性もあることから、議論は慎重に行って頂きたいと願っています。

(白帝ニュース平成23年4月)


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