学生街の点景

理事長 吉田 弘美

友人の仕事場が東京の高田馬場にあります。そこは有名大学の近くで、古くから学生街と言われている町です。学生街の条件は人や時代により様々だとは思いますが、ここは本当に日本の中の典型的な学生街です。名画座ありJAZZ喫茶あり名曲喫茶ありロック喫茶ありの町でした。(過去形なのは悲しいかな廃業されたお店もあるからです。)当然、飲み屋さんも多く、それぞれのお店が個性を競い合っています。それこそ私が学生だった35年も前からたまにお世話になっている町です。酔い潰れた人や、終電に乗り遅れた人を平気で泊めてくれるお店が当時は普通でした。今考えると、儲けることが一番でなく、どうやって心地よくお酒を飲んでくれるかが主であったと思います。この年にしてやっとその心意気に気づくなんて、私の成長はとても遅いです。時は移り時代が変わってもここにはまだ当時の心意気をヨシとしたお店が残っているのが嬉しいかぎりです。そんな飲み屋さんの中でいつも、二件目に訪れるバーがあります。そのお店はビルの二階にあります。木製の専用階段を上がり、さらに木製扉の向こうにあります。カウンターとテーブル席といったとてもシンプルな構成です。バーですから当然バーテンダーがいるわけですが、ここのバーテンダーは少し、他とは趣が異なるかもしれません。男装のオバちゃんとおばあちゃんの境い目くらいの方がそれなのです。いつも、きりりと蝶ネクタイを締めチェックのベストを身にまとい・・・と言ったら厳しそうですが格好とは裏腹にとても和めるオバおばちゃんです。
先日お邪魔したのは梅雨入り少し前の頃でした。スーツ姿の男性が最初は一人でオバおばちゃんに、(就職したばかりだったんですね。きっと。)悩み相談です。そうこうしているうちに数人の(多分後輩の学生さんでしょうね。)人達がそろうと、もうそこには頼りなげな社会人一年生の姿はどこにもありません。立派なものです。そして、しばしの時間、先輩の社会とは・・・なんていう類の演説が続きました。一息つき良い具合に酔いも回ってきたのでしょう。そうこうしているうちにスーツ姿の先輩を先頭に彼らは夜の街に消えていきました。
後に残ったのは僕たちだけです。そんな僕たちに「社会人になってまだ、2~3ヶ月だからね。赤子ならまだ首もすわりゃあしないよ。」と話が始まりました。学生時代から、そして社会人になってもここにふらっと来てくれるお客さんは沢山いるそうです。みんなその時々の悩みを打ち明けに来るそうです。「店はね、人が作るんだよ。数ヶ月前までは学生だったのがスーツだろ、それだけでも違うし、客が変われば店も変わるんだよ。」と打ち明けてくれました。彼女はその変化がとても楽しく好きだそうです。
店は人が作る。同じように、医療は人が作る。・・・というのが本来の姿ではないかと思います。そう考えると、経営効率ばかり優先して、人を単に労働力としてみる派遣とか業務を物としてみる傾向がある委託などといったものも、上手く取り扱わないといけないと思います。職場(我々だと医療)は人が作るのです。この単純な構図を今一度、確かめる時が今ではないでしょうか。最後に結構、語っておきながら「私はただ聞くだけだよ。」と、言ったオバおばちゃんバーテンダーの一言に、妙に酔った夜でした。

(白帝ニュース平成22年10月)

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