「こころの健康政策構想会議」の提言について

院長 加藤 荘二

5月28日「こころの健康政策構想会議」(座長岡崎祐士都立松沢病院院長)が長妻厚生労働大臣に精神保健・医療改革に関する提言を行いました。この会議は長妻大臣の要請を受けて当事者・家族27名、精神科医などの専門家63名の「有志」が集まり、4月3日に発足したもので、その後短期間に集中的に議論して今回の提言をまとめ上げました。政策提言に当たっては、(1)当事者や家族をはじめ国民のニーズを主軸に据えた改革、(2)高質と効率の双方を重視したサービスモデルへの転換、(3)数値目標およびその期限と達成戦略を明確にした手法、を原則に作業が進められました。提言の主だった内容は以下のようです。
○保健、医療、福祉のすべての分野で、多職種チームによるアウトリーチ(届ける、手を差し伸べる)をサービスの基本にする。病気を治療するだけでなく、「当事者の生活全体を支える全人的サービス」を行う。
○市区町村が主体となる「地域こころの健康推進チーム」を創設し、住民のこころの健康問題のすべてに対応する。人口10万人に10人からなる1チームを設ける。
○医療においても多職種チームやアウトリーチを実現する。早期支援チーム、危機解決・訪問治療チーム、重症者を支えるACTチームなどを設ける、医師のみの3分診療?を多職種による30分医療に変える。
○救急医療をエリアごとに整備する。
○児童思春期、薬物依存、身体合併症などの専門医療を普及させる、認知行動療法普及のため、認定認知行動療法士の育成や、専門家育成のための1~2日のワークショップを実施する。
○精神医療の人的配置と診療報酬を一般医療と同等にする、当事者が住む場所や医療と生活支援のサービスを受ける権利を失うことがないよう十分な配慮をしつつ全国の精神病床を半減することを決め、その期限を定めて、実行のための計画を立てる。
○家族を始めとする介護者を地域社会で支援する。医療保護入院などの保護者制度を廃止して、非自発的入院への同意や人権擁護については別の制度を検討する。
○こころの健康問題について啓発するため、「こころの健康増進啓発機構」(仮称)を設置、学校教育において精神疾患教育を導入する。
○権利擁護組織やサービス評価組織を市区町村に設置する。
○ 「こころの健康の保持および増進のための精神疾患対策基本法案」(仮称)を制定し、それに基づいて「こころの健康推進基本計画」を策定、精神保健福祉法など関連する法律の見直しを進める。
改革は期限と数値目標を明確にして行う。2011~2012年度は全国50エリアで改革(「地域こころの健康推進チーム」の設置とアウトリーチのことか?)を試行、2013~2015年度は本事業前期として必要性の高いと考えられる市区町村で50%、2016~2017年度は本事業後期として改革実施の困難な地域も含めて全国での普及を目指して80%の実施を目標にする。
厚生労働省は5月31日に「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」を設置して、「こころの健康政策構想会議」の報告を踏まえた意見交換を行い、まず医療や福祉の専門家チームが精神疾患のある患者の自宅を訪ね医療や生活相談を行う訪問支援(アウトリーチ)を本格導入することを合意し、来年度予算の概算要求に関連の費用を盛り込む方針を固めたとのことです。
アウトリーチを精神医療改革の「切り札」にして、これを普及させることで社会的入院や慢性期重症患者などの長期入院を地域に移行させて精神科病床を半減させようとするわけですが、コストが高く、またスタッフに大きな負担を強いるアウトリーチが簡単に普及するとは思えず、また一歩誤ると「地域管理」に変質する恐れがあることも考慮しなければなりません。
この唐突な提言が今後どのように扱われるのか分かりませんが、もし精神保健医療福祉改革の「たたき台」にされるのなら、今後各方面の意見を十分聞き、様々な角度から検討し直し、時間をかけて修正して欲しいものです。今回の参議員選挙の結果でその可能性は低くなりましたが、拙速のあまり、障害者自立支援法の二の舞になることのないよう切に願っています。

(白帝ニュース平成22年8月)


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