新型インフルエンザ

診療部長 日比野 良弘

インフルエンザは、強い感染力により短期間に速やかに流行拡大するインフルエンザウイルスによる急性感染症の一種で流行性感冒とも言われます。「インフルエンザ」の名は16世紀にイタリアで始まりました。当時の人は、冬季になると毎年のように流行が発生し春を迎える頃になると終息することから天体の運行や寒気などの「影響」(英語の  influence にあたる)と考えたようです。インフルエンザは日本でも江戸時代には流行し「お七かぜ」「谷風」などその時々の名前がつけられました。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型がありそのうちA型が最も流行しやすい型です。血液型にもABOの他にRh+などの区分があるようにA型インフルエンザウイルスにもたくさんのタイプがあります。これはウイルスの表面の蛋白のうちNAとHAに変異が多く、鳥では現在までにHが16種、Nが9種見つかっています。Aソ連型はH1N1ですしA香港型はH3N2と記載されます。また同じH1N1型でもその亜型があります。この変異の多さがそれまでの罹患やワクチン接種によって獲得された抗体が時に効かなくなる原因であり何十年に一回の大きな変異にはインフルエンザが大流行することとなります。
さて2003年に中国で発生し海外旅行のキャンセルが続出したSARS(重症急性呼吸器症候群)はインフルエンザウイルスではありませんが新種のコロナウイルスによるものでした。A型インフルエンザウイルスのなかに鳥インフルエンザがあります。これは鳥から鳥に感染するものです。その中でアヒルなどの水鳥を自然宿主として宿主には害をもたらさず、鶏などの家禽には感染すると非常に高い病原性をもつタイプがあり「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)」と呼びます。日本でも渡り鳥によってもたらされたこのインフルエンザにより2004年に大量の鶏が処分されました。種の壁があるため一般にヒトにはヒトインフルエンザしか、鳥には鳥インフルエンザしか感染しません。ところが2003年以降鳥インフルエンザの鶏からヒトへの感染が東南アジアで続き2003年12月から2009年1月まで発症者403名で死亡者は254名となりました。ただし今のところ感染者は鶏と濃厚な接触をした人がほとんどです。
インフルエンザは鳥や豚にも感染し、豚は鳥、ヒトの両方のウイルスがうつります。ヒトインフルエンザは、元は鳥インフルエンザウイルスが遺伝子変異して人間に感染するようになったと考えられています。インフルエンザウイルスの変異によって動物からヒトへ、ヒトからヒトへと感染することがあり「ヒトからヒト」への伝染が確認されると新型インフルエンザと呼ばれます。感染症学者がもっとも恐れたのは高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の新型インフルエンザ化でした。このような背景のもと国は2005年12月に「新型インフルエンザ対策行動計画」を立てました。「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」の2009年2月の改定版を読むと様々な行動計画があり中には「死亡者が増加し火葬能力の限界を超えることが明らかになった場合には」という文章もあります。ただこの時点では「新型インフルエンザはまだ発生していない状況であり」と書かれています。ところが2009年4月にメキシコで流行が認知されたA型H1N1亜型(豚〈SWINE〉インフルエンザ)は当初感染死亡率が非常に高いと報道されたためか「新型インフルエンザ等感染症」に指定されその結果、行動計画に沿って空港での物々しい検疫や隔離入院措置などが施行されました。現在ではこの方針は変更され季節性インフルエンザとほぼ同等な扱いとなっています。実際致死率は季節性インフルエンザと同様かそれ以下と考えられています。新型インフルエンザには2つの意味があると思います。1つは新しいタイプのインフルエンザという意味の新型でこれはその病原性の強さは関係なく今後何らかの名前を得て季節性のインフルエンザに収束していくもので、もう1つは、国が危惧し法律を制定し様々な行動計画を建てた高病原性のインフルエンザが新型インフルエンザ化したときに呼ばれる新型インフルエンザというものです。早くややこしい「新型インフルエンザ」という呼称からちゃんとした固有名を与えるべきだと思います。ところで、今回の新型インフルエンザ騒ぎでは関西から罹患者の報告が続き、結果として関西が修学旅行のキャンセルやイベント等の中止で大きな影響を受けました。一方、首都東京はそういう意味では影響は免れました。これはダブルスタンダードではないのでしょうか。

(白帝ニュース平成21年11月)


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