10年間を振り返って

院 長 加藤 荘二

6月で院長に就任して満10年になったことから、これまでを振り返り、主だった出来事をまとめてみました。院長に就任したのは平成11年(1999年)6月で、院長としての仕事は「コンピューターの2000年問題」から始まりました。この2000年問題については、今ではほとんどの人は覚えていないと思いますが、「1999年12月31日から2000年1月1日に日付が変わる時に、コンピューターが誤作動して電気、ガス、水道の提供が停止し、鉄道や飛行機も止まるおそれがある」とされた問題で、病院では医療機器などが停止するおそれがありました。そのため院長就任後直ちに対策を協議し始めましたが、「ブラックボックス」についてはせいぜい業者に点検を指示することしかできず、非常用の食料、飲料水、暖房器具などを大量に購入して万が一に備えました。そして大晦日は主任以上の職員を自宅待機にして日付が変わるのを待ちましたが、この時は不安や緊張よりも妙に気分が高揚したことを覚えています。結局は何も起こらずあっけなく終わりましたが、この問題を契機に「危機管理」という厄介な問題が管理者の仕事に加わりました。そして2002年2月に起きた「えひめ丸」事件(愛媛県の高校の実習船が米海軍の原子力潜水艦と衝突して9名が行方不明になった事件)で、連絡を受けた首相が暫くゴルフを続けていたことが非難されて以後は、ゴルフのラウンド中は携帯電話を手離すことはできなくなり、夏休みに携帯電話が繋がらない信州の山奥の秘湯で2~3日過ごす計画も諦めることにしました。
平成14年4月には、保険史上初めて本体部分が引き下げられて診療報酬が大幅にダウンされました。これは小泉内閣の「聖域なき構造改革」が医療に及んだもので、その後3度の診療報酬の改訂はいずれもマイナス改訂であり、特に平成18年の改訂では再び大幅ダウンが行われ、当院においてはこの10年間で実質10%のマイナスになり、病院運営に大きな影響を与えています。
同じく平成14年には、日本精神神経学会が精神分裂病を統合失調症に呼称変更することを決定しました。これは家族会などから、精神分裂病という病名が誤解や偏見の一因となっているという指摘があり、学会内に「精神分裂病の呼称変更検討委員会」を設置して約10年間検討し、新病名は公募を行って最終決定されました。呼称変更してわずか7年ですが、今では精神分裂病という病名は「死語」となり、統合失調症という病名はしっかり定着しています。ただ呼称変更が、誤解や偏見、差別の解消にどこまで貢献するのかは定かではありません。
平成17年7月には「心神喪失者等医療観察法」が施行されました。この法律は、殺人や放火等の重大な犯罪で不起訴処分になったり、起訴されても心神耗弱のため実刑にならなかったりした「精神障害者」に、同様な行為を行うことのないよう適切な医療を受けさせて再発防止と社会復帰を図ることを目的としています。全国で24病院(指定入院医療機関)に720床の専門病床を設置することになっていますが、予定通りには進んでおらず、指定通院医療機関の整備も遅れています。厚労省の担当者は、国会の答弁で、「この法律と精神保健福祉施策全般の充実向上が、(精神障害者の)社会復帰促進の『車の両輪』」と述べていましたが、私にはこの法律と精神保健福祉施策全般の充実向上が同じスケールのものとはとても思えませんし、そもそも両者は進行方向が全く逆のものと認識しています。
平成18年4月には障害者自立支援法が施行されました。身体、知的、精神の3障害を一元化し、これまでの応能負担を原則1割の応益負担にする等、障害者福祉の大転換が図られました。しかし重度であればそれだけ負担が重くなるような制度は、サービス利用が長期になる障害者医療福祉に適するはずはなく、何度も修正を余儀なくされ、今回の改正案では応益負担は実質的に撤廃されるはずでしたが、衆議院の解散で廃案になりました。しかしもともと性格の異なった3障害を同じ尺度で測るのには無理があり、一から作り直した方が早いのではと感じています。
21世紀に入ってからは、経済活動の自由を第一に考える新自由主義的な施策がとられ、あらゆる分野に市場原理と競争が持ち込まれましたが、次第にその破綻が明らかになり軌道修正されつつあります。医療保健福祉においても社会保障費の自然増2200億円の抑制は事実上撤回されており、来年の診療報酬は久し振りのプラス改訂になるようです。ただ精神科においては、急性期治療や退院促進、地域生活支援に重点が置かれて、慢性期治療は軽視され、身体合併症治療についても充分な評価はされていないため、全体での大幅なアップは望めそうにもありません。
犬山病院では、平成19年7月に新病棟が完成し、精神科急性期治療病棟、内科合併症用病棟、精神療養病棟を設置して、8病棟体制で「機能分化」をすすめ、「急性期に偏らず、慢性期治療をなおざりにせず、可能な限りの身体合併症治療を行う」という入院治療の方針を掲げていますが、今度の診療報酬改定次第ではこの方針を変えざるを得なくなるのではと心配しています。

(白帝ニュース平成21年8月)


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