時代の空気

理事長 吉田 弘美

近頃、時代の空気はどうですか。とりあえず、いい話より悪い話の方が多いように思います。でもこれも、ひょっとすると私たちの気のせいかもしれません。ただ、なんとなく世の中は閉塞感で満ち溢れているように思うのは私だけではないと思います。一体この閉塞感はどこから来ているのでしょう。
そのひとつは、未来に希望が持てないことにあると思います。昭和の30年代からバブルまでの常に今日よりも明日、明日よりも明後日といったように成長していく時代であれば未来に対する希望は失いにくい時代だったと思います。それに引き換え現在といえば成長はマイナスに転じ財政は日に日に厳しさを増すばかりです。補助金、医療費、年金…などなど、全てが先細りです。「どうすりゃあいいのさぁ!」と叫びたくもなるというものです。このあたりが資本主義の限界なのでしょうね。一昔前ならここで「戦争」を起こしチャラにしてまた発展していくといった構図になるのでしょうが、もはやそれができるほど世界は広くはありません。「悪魔の辞典」でビアスが「平和とは戦争と戦争の間」といっていたのを思い出しますが、もはや彼も遠い人なのです。私はNPOの作業所にかかわっているのですが、ほんの数年前までは作業所の施設を使う収益事業は補助金という税金を使い賃借している以上、それはまかりなら無いといわれたものでした。…が、今では収益事業を起こし財務状態が健全でないところには補助金は交付しません。…といわれるしまつです。理念からして変わってしまったのですね。そういえばずいぶん前に医療法人も業態としてフィットネスとか、その他数種の業態を許可しますというのがありました。(今もあると思います)なかなか、おいそれとは手を出せない業態だったように記憶していますが、これも見方を少し変えればもうこれからは医療費も補助金も皆さんの満足がいくようには出ませんよ、あとは自分たちで何とかしなさいよ、というメッセージだったように思います。
次にもうひとつの原因はパスカルのこの言葉の中にあると思います。
「私は人間の不幸は只一つのことから起こるものだと知った。それは部屋の中で休息できないということである。」
休息できないのは辛いです。誰だって休みたい時はありますよね。人生がくたびれるに値するかどうかはともかくとして、くたびれたのを癒す、つまり休息は大事だと思います。ただその方法がもっと多様であっていいのではないかと思います。いい加減である私は、もちろん部屋の中でも休息できるし、部屋の外でも休息がでます。自然の中はもちろん、群集の雑踏の中や、猥雑な環境の中で休息を見出し、一息ついている自分に気づき、結構喜んでいるのです。
もっと細かく検証していくと更に明確になると思いますが、世の流れはとてつもない加速状態に入っているのかもしれません。インターネットの出現以来、情報量は格段に増えたと思います。(選別が大変ですが)情報こそ変革の源です。そんな目まぐるしい世にあって、その変節を嘆くより、その中に身を任せるのが一番の得策だと思います。私の好きな言葉の一つに、井伏鱒二の下の詩があります。

「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」
というものです。数知れない因習との軋轢、人を一つの価値観に押し込めようとする権力との葛藤のとき、現状維持にしがみつく考えに、さよならを言うことこそ、世の流れに身をゆだねる処方箋ではないのでしょうか。

(白帝ニュース平成20年10月)

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