犬山病院の入院診療の基本方針

院 長 加藤 荘二

7月上旬に日本精神神経学会より「精神神経学用語集改訂6版」が出版されました。今回の改訂は1989年以来20年ぶりで、その間DSMやICDなどの診断基準や疾病分類が普及して新しい精神科用語が急増し、その一方で「精神分裂病」が統合失調症に、「痴呆」が認知症に呼称変更されるなど大きな変化がありました。学会は2005年に厚生労働省主導で「痴呆」が認知症に呼称変更されたのを機に、「精神科用語検討委員会」を設置し、医学的だけでなく、社会的な観点からも用語を見直し、3年を費やして今回の改訂に至りました。今回の改訂で主だった用語の呼称変更と理由は以下の通りです。
(1) 社会不安障害
引きこもりと誤解されやすいため、「社交」不安障害に
(2) 行為障害
不器用で動きが上手くできない人と勘違いされやすいため「素行」障害に
(3) 人格障害
人格否定の印象を与えてしまうため「パーソナリティ」障害に
(4) 外傷後ストレス障害
身体のケガの後の心理症状を受け取られることがあることから「心的外傷後ストレス障害」に
しかし「社交」不安障害では私のような「非社交的」な人間には余計な不安を与えることにもなり、「素行」障害では素行の悪い子供は精神科治療の対象になるとの誤解を与えます。その一方で、「反抗挑戦性障害」という、何度聞いても背筋が寒くなる、とても医学用語とは思えない用語はそのまま残されています。誤解や偏見を招きやすい用語について呼称変更されましたが、残念ながら今回の呼称変更の評判はあまり良くないようです。
さて犬山病院のことになりますが、新病棟がオープンして1年余経過しました。昨年は新病棟のオープンと西3病棟の精神科急性期治療病棟の認可に全力を傾け、今年は「8病棟体制の全体のバランスを第一に考え、その中で機能分化を進めていく」という方針で臨んでいますが、なかなか思い通りにはいきません。まず各病棟の現状を述べてみます。西3病棟は12月に精神科急性期治療病棟の認可を受けた後もコンスタントに入退院があり順調に稼動しています。ただほとんど満床状態にあるため緊急入院が困難な場合があり、また時に新患率や退院率が4割に近づくことがあることから、今後はより緻密に病床管理をしていきます。西1病棟の療養病棟では、自由に犬山市街に外出したり、夕食後にも病院周囲を散歩したりと、患者さんはゆったりと療養されています。病院レクや作業療法への参加は少なく、また間食、肥満、多飲水などが目立つ患者さんが増えたため、生活指導の強化が必要ですが、療養病棟の機能は十分果たしていると思っています。一方、一般精神病棟では、西2病棟は内科合併症の治療や呼吸器感染症対策のために新設した病棟ですが、「寝たきり」の患者さんや、胃瘻を設置したり経管栄養や中心静脈栄養を必要としたりする患者さんが増加し、HCUは常に満床で病棟の余裕はなくなりつつあります。介護強化病棟である南1病棟や南3病棟は、発熱、誤嚥、肺炎、イレウスなどを繰り返す患者さんが増え、その対応に追われています。南2病棟や北2病棟の開放病棟(社会復帰リハビリ病棟)や北3病棟(慢性期の閉鎖病棟)においても高齢化が進み、介護を必要とする患者さんが増え、退院も少なくなりました。このように入院患者さんの高齢化と日常生活活動能力の低下、身体合併症の増加と重篤化が病院全体に大きな負担になっています。当院の一般精神病棟の看護基準は15対1(以前の基準で言うと患者3人に対して看護師1に相当)、看護補助10対1、と民間精神科病院としては標準以上のものですが、西2病棟などに看護職員を重点的に配置しているために他の病棟が少し手薄になり、また各病棟とも身体合併症の治療看護や誤嚥、転倒などの事故防止を優先せざるを得ないため、本来の精神科治療活動が停滞してしまっているのです。これが現在の当院の一番の問題と認識しており、これに対しては、看護師などの大幅増員は経営上無理であり、看護補助職員を増員することで介護レベルの問題に対応し、また作業療法やSSTをより患者さんが参加しやすいものに工夫したり、PSWなどの他の職種とのチーム医療で長期入院患者さんの退院促進をしたりすることで、慢性期病棟の活性化を図りたいと考えています。
「急性期治療に偏らず、慢性期治療をなおざりにせず、可能な限りの身体合併症治療を行うこと」が、犬山病院が地域の精神科病院としてバランスよく発展することに必須なことであり、これを犬山病院の入院診療の基本方針としたいと考えていますので、宜しくお願いします。

(白帝ニュース平成20年8月)


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