マニュアル 2題

 事務長 宮脇 茂樹

その1
今年の春、大学生の長女が自動車の運転免許を取ってきました。正確には自動車学校の卒業証明書を取得しただけなので、運転免許試験場で学科試験を受ける必要がありますが難しい技能試験(実地試験)は免除されるというものです。
最近の自動車学校は合宿免許というのが流行で、地方の自動車学校が宿泊施設を用意して集中教習により2週間位で免許が取れるシステムになっています。
料金も安くて観光旅行気分も味わえるということで、時間はあるけれどお金のあまり無い下宿大学生には人気らしく、長女は友人と二人で九州までフェリーで行って来ました。
私が免許を取ったのは路上教習が始まる直前の昭和48年3月で、飛び込み試験を受ける人がいたり、1991年から認められたAT(オートマチック)限定免許もありませんでした。
当時の自動車教習で最初に当る壁はマニュアルトランスミッション(MT=手動変速機)による発進時のクラッチ合わせです。エンジンを掛けた後、左足でクラッチペダルを踏んでクラッチを切り、MTを1速に入れる。そして、右足でアクセルペダルを軽く踏みながら、左足で踏んでいたクラッチペダルを徐々に戻してクラッチを合わせる事です。
言葉では簡単ですが、実際にやってみると意外と難しく、必要以上にエンジンを空ぶかししたり、ガックン、ガックンと発進したと思ったらエンストの連続で何回もやっていると最後には左足がつりそうになってきます。
免許を取って一般道で運転を始めた頃は、平坦な道路での発進は問題ないのですが急な上り坂の交差点で止まった時には一気に緊張が走ります。
ましてや後ろにピタッと黒塗りの高級外車が止まった時には更に緊張感が増してきます。
そして信号が青に変わりいよいよ発進です・・・がこの先はご想像におまかせします。
現在はAT車にしか乗りませんのでこの様に緊張することはありませんが、同年代の方はMTで同じ様な苦い経験をされたのではないでしょうか?

その2
最近、ある部署の業務について、マニュアルに書いてないので、どの様に対処したら良いかわからない。そしてマニュアルに、こういう場合はこの様に対処しなさいと、どのような場合についても書いてもらいたいと言う話を聞くことが何度かありました。
この話を聞いて、果たしてそこまでこと細かに記載する必要があるのだろうか?またすべてのケースについてマニュアルに記載することができるのだろうかと疑問がわいてきました。もし出来たとしても膨大な量になってどこに何が書いてあるかわからなくなってしまうようにも思えてきます。
マニュアルという言葉はすでに日本語として一般的に使われており、国語辞典によるとその意味は手引書、取扱(操作)説明書、手順書となっています。
英語のマニュアルはもともと「手動の」という形容詞であり、派生してマニュアルとは機械装置に対する手動による「取扱(操作)説明書」になったと思われます。家庭にある電化製品であればどんな物でも必ず詳細な内容が記載された取扱説明書が付いていてマニュアルどおりに操作しないとちゃんと動いてくれません。
また、工場などにある機械設備等についても同様に詳細なマニュアルがあり、マニュアル通りに操作しないと大きな事故につながる危険もあり、事細かな手順が決められ必ずその通りに操作することが求められます。
その後、機械装置に限らず「組織」、特に多くの人を同じ様な業務に短期間で効率よく従事させるために必要な手順書としてのマニュアルが出来たのではないでしょうか。
ファーストフード店の画一的で味気ない対応やアルバイトによる即戦力調達という考え方はその一例であり、逆に一流の工房や老舗と云われる店などはその対極にあってマニュアルの代りに充分なコミュニケーションとじっくり人材を育てる考え方である様に思います。
では、病院の中で使われているマニュアルはどうでしょう?取扱説明書的なマニュアルもあるかも知れませんが、多くは機械ではなく、業務についてのマニュアルであり、取扱説明書ではなく、最低限を定めた要領や要綱あるいは規定や規則である事が多い様な気がします。
取扱説明書的なマニュアルについては詳細な規定とそれを遵守することが大切ですが、要領、要綱のようなマニュアルについては詳細な規定が無い部分や、具体的な事例に対しては個人が考え、判断して対処することが必要になってきます。
そこで重要なのは、個人が自分の価値観で考え、判断するのではなく、組織人として共通の価値観に基づいて判断するという事です。
つまり犬山病院には病院の基本理念、基本方針等が定められており、これらをもとにした組織人としての共通の価値観を職員同士が共有した上で個人が判断し対処することが重要であると思います。
沢山のマニュアルに囲まれていると自分自身で考え、判断しようとしないでマニュアル頼みになりがちですが、業務を円滑に遂行する手段や道具としてマニュアルを使いこなす事、状況の変化に対応してタイムリーに修正する柔軟性を持つ事も重要ではないでしょうか。
そうでないと、マニュアルが増えれば増えるほど、人間が機械の様に使われる立場に近づいて行く様な気がしてなりません。
木を見て森を見ずという言葉があります。組織が大きくなればなるほどマニュアルは必要になり数も増えてくるでしょうが、目先のマニュアルにとらわれすぎて組織のバックボーンである基本理念や基本方針、それに基づく共通の価値観を見失う事の無い様にすることが組織造りの基本として重要ではないかと思っています。

(白帝ニュース平成20年7月)


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