少しだけ「医療経済学」

理事長 吉田 弘美

先日、かかわりを持っているNPO法人で医療、福祉とお金というタイトルで対談をしました。とても楽しい時間を過ごしてきました。またそれは機会を見てここに掲載したいと思っています。今回はそこで出た問題を少しお話したいと思います。まず、医療に関してですが、医療を吟味する時にとられる手法として次の三つが大きな要素となります。1)医療へのかかりやすさ、2)医療費、3)医療の質、と言った三点が医療の大きな問題点と言えると思います。
さて、まず医療へのかかりやすさはどうでしょう。これは保険のせいもあり日本はとてもいいです。いつでもどこでもどこにでも受診できますし、まず医療機関で門前払いされる事はあまりありません。
次に医療費です。これはどこで見るかですが、ひとつの基準として日本国内における医療支出が、その絶対額と伸び率の両方とも、同じ社会保障に含まれる年金よりも低い現実があります。医療総支出の対GDP比は(2001年)で8%と世界の先進国のなかで最低です。アメリカは13.1%です。以上のことから日本の医療費はとても低い水準だと言えます。これに付け加え経済振興対策費(日本の公共事業関係費はここに含まれます)は割合が高く英国、スウェーデンの2倍、ドイツ、フランスの1.5倍になっています。
そして医療の質ですが、国際比較できる指標としてまず、いつも出てくるのが平均寿命、乳児死亡率です。これで比較するとこれは世界でも1~2位です。これは通常単位人口当たりの医療従事者数の多いほど良好とされています。しかし、医師数でいうと先進諸国中、最下位です。なぜいいのでしょう。しかし、CTの数は米国の6倍、英国の13倍です。MRIにしても先進諸国の3~9倍です。つまり、日本の医療においては医療従事者への配当は相対的に低く、医療機器への配当は高くされていることが分かると思います。
以上のことから考えますと、日本はとても安く、質の高い医療を受けられる国と言えると思います。
しかし、それでも医療費が高騰し続けるのはなぜでしょう。この犯人探しに各国の医療経済研究者の間で、総医療支出と急性期医療費(これが総医療支出の大半を占めます)についての研究がなされ、すでに終了しています。そう、犯人はすでに挙がっているのです。今まで言われてきた、1)人口の高齢化、2)医療保険制度の普及、3)国民所得の上昇、4)医師供給数の増加(もしくは医師誘導需要)、5)医療分野と他の産業分野の生産性上昇格差、以上が今まで、いや日本では今でも言われている犯人たちです。しかしこれら全てを含めてもせいぜい20~25%しか説明できないのです。後の50~75%に関しては数値化が不可能な他の要因となるのです。つまり、主犯は誰だかわかっていません。今、日本国の役人が大声で騒いでいる「人口の高齢化」による総医療支出の上昇なんていうのは幻にも等しいのです。これは国際研究機関の比較研究で、もはや日本以外では常識的な事柄です。寿命の延長は介護医療費を上昇させるだけなのです。どんなに寿命が延びても急性期医療が施されるのは死亡の一年前からが普通なのです。ですから「後期高齢者医療・・・」などと言うのは笑止以外のなにものでもないわけです。また2)~5)に関しては、またいつか機会を作ってお話したいと思います。ただここでは簡単に一点のことをお話しておきます。もうひとつ政府が言っている保険をはずし民営化する、病院、医院も一般法人のようにすると言う動きですが、これをした米国、チリ、フィリピン、全ての国で医療の質はおち、受診がしにくくなり、医療費は高騰してしまったのです。公の医療保険は最善の策ではないにしろ次善の策だと言うのは各国の共通認識なのです。
それでは、なぜ日本はかくもトンチンカンなことをしているのでしょう。医療経済的、医学的に検証すべきデータを出してくれないから誰も研究できない、と海外からも批判があるのですが、これは出さないのでなく出せないのかも…なんて思うようになりました。というのも精神科ひとつとってみても、精神科にはいろいろな病気があるのに、点数的に区別が無いのは変ですし。これではデータなんて取れません。
アメリカは悪いところもいいところもダイナミックで「医療保険制度の功罪」を経済学的、医学的に検証することを1984年にしました。「RAND ランド医療保険件研究」と言い326億円もかけたのです。もう20年以上たつのですがこれが今もって各国の医療経済研究に大きな影響を及ぼしているのです。日本でもそんな研究がみんなの幸せのために必要な時ではないでしょうか。そうすれば無条件で協力させていただくのに・・・。
みなさん、高齢者が増えても総医療費は高騰しません。

(白帝ニュース平成20年6月)

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