gb7.gif (2799 バイト)

buttrm1.gif (2602 バイト)

logo_02.gif (4689 バイト) ihname_4.gif (3626 バイト)

gb7.gif (2799 バイト)

buttrm1.gif (2602 バイト)


book.gif (2555 バイト) “顔つき”

名誉院長 吉田 弘道

 本院の新人職員研修で“面接のしかた”を話そうと思って適当な本はないものかと本棚を探したら数冊出てきた。その本の中に私の字で書き込みがあったり、アンダーラインが引いてあるので過去に読んだことがあるのだろう。しかしその内容はぜんぜん憶えていない。こんな状態なのに古い本を引っぱり出して読んでいる。

 何も新しいものばかりが良いとは限らない。私が昔教わったことでも現在十分に通ずる大事な教えもあることに気がついた。

 私が精神科に入って初めて耳にした言葉にゲジスト・アウスドリック Gesichts ausdruck なる独乙語があった。辞書には“顔つき”と出ている。患者さんに会い初めて見るのは、その人の顔である。私達は患者さんの顔を見て、瞬時にいろいろのことを感じとる。人の顔は心を表すとも云われるので精神科では特別の第一級の症状ではなかろうか。

 吾々がよく出くわす“しかめ顔(Grimassieren)”なる顔がある。精神科ポケット辞典には「眉間に皺を寄せ目を見開き顔を歪めるような奇妙な表情で主に緊張病型や破瓜型の統合失調症によく見られる」と書いてある。精神病に特有な顔があるのである。

 また日本人はよく無表情だと云われるが、北欧人も日本人より無表情だと云われている。ノルウェーの人類学者に云わせると、その原因は男女関係にあると云う。日本では“女性は愛敬”だとよく云われるが、ノルウェーでは女性が男を選ぶのだという意識が強く営業用の愛想笑いなど必要ないのだと云う。

 顔の表情は広辞苑によれば「心の中の感情、情緒を外観や身振りに表すこと」と出ている。ついでに表情術なる字が目にとまった。表情術とは「動作姿勢、面貌などの上に思想感情を表現する技術」とある。「舞台上の演技の要素をなす」とも書いてある。演技を顔に表現するとは、すごい事だと思う。

 古い雑誌も取っておくと役に立つこともある。それは2000年2月号の「脳の科学」に「顔の表情」なる特集号を見つけ読んでみた。そうしたら「日本顔学会」なる学会のあるのを知った。その会員の専門分野といえば哲学はじめ人類学、心理学、生理学、美術解剖学、歯学、犯罪捜査、社会学、コンピューター学、伝統芸能と誠に多士済々であり、医学以外の人達が「顔」にこんなに注目しているのに吃驚した。

 何時のことだか忘れたが、街角に易者が立っていた。その後ろ壁に人相学、骨相学と書いた垂れ幕を見た覚えがある。その昔、人の顔や骨の型で、その人の性格を占っていたのである。人の顔が動物に似ているとその人の性格は動物に似てくると云われたものである。

 最近TVを見ていてTVに出てくる中国人の顔が変わって来た様に思えてならない。中国も生活が豊かになり、欧米の教育を受けた人が多くなったせいかなと私は勝手に想像している。

 私は学生の頃まで人に会うとこの人いい人、この人悪い人と直感的に決めていた。その時、自分の表情で相手の心が読みとられるのではないかと心配したものであった。今はもうあつかましくなり、誰とでも対等に平等に会って話が出来る様になってきた。

 顔で得する人に損する人もいる。私の知人の社長さんは何時までも童顔で誰からも愛される幸の人がいる。若い人の顔、子供の顔は新鮮でいいものである。

 顔の表情は実証性がないもので科学的根拠に乏しいもので、学問が一番嫌うところである。

 それなのに何是「顔学会」なる学会が出来たのであろうかと考えた時、それはコンピューターのせいではなかろうか。人の感情までコンピューターが入ってきたためだろうと私は想像している。

 「日本顔学会」の会員も多士済々でいろいろの方向から顔にアタックすれば、きっと素晴らしい結果も出てこよう。皆とコラボレーション(協調作業)することが大事ではなかろうか。

 精神科の診察も感性だけの判断だけでなく、もっともっと面白い発展があるかもわからない。楽しみなものである。

(白帝ニュース平成16年3月) 

hana6.gif (5528 バイト)


buttback.gif (1369 バイト)