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2005年を振り返って

病院長 加藤 荘二

 精神科病院の管理者にとって冬は魔の季節、インフルエンザ等の呼吸器感染症の流行だけでなく、その他の身体合併症も重症化し易く、また転倒、誤嚥等の事故も他の時期よりも多く発生します。さらにこの冬は新型インフルエンザの流行が噂されて、一層憂鬱な気分になりましたが、何とか気を取り直して、今年一年間の犬山病院と精神科領域の主だった出来事をまとめてみました。

 3月11日に(財)日本医療機能評価機構による病院機能評価の認定病院の確認審査がありました。当院は昨年5月21日付で認定病院に更新されていましたが、8つの改善要望事項と2つの留意事項があり、本年3月31日までに改善させることが条件でした。確認審査の結果、8つの改善要望事項と2つの留意事項はいずれも一定水準以上に達していると判断され、4月1日以後は「条件なし」の認定病院となっています。次の審査は平成20年で、Version5.0と審査基準が更に厳しくなりますが、病院の業務全般を組織的、継続的に見直すことで認定病院更新を目指します。ただし私自身は病院機能評価を絶対的なものとは捉えておらず、また認定病院更新は目的ではなく、医療の質やサービスの向上のための手段に過ぎないと考えていることを強調しておきます。

 4月1日に個人情報保護法が施行されました。厚労省の医療機関用のガイドライン作成が遅れたこともありその対応に苦慮しましたが、幸い当院では大きなトラブルや問題は発生しませんでした。当院の方針は外来や病棟の掲示板にポスターで掲示してあります。またこれを機に個人情報保護管理委員会を設置し、カルテ開示の手順や外部からの問い合わせの対応等を協議しました。この法律の是非は別にして、個人情報管理や医療者の守秘義務の重要性を改めて考えさせられました。ところが政府は、医療機関が警察からの捜査照会に応じない等の「過剰反応」していることを理由に、運用の見直しを考えているようです。医療機関が法や自らの守秘義務に則って対応していることを「過剰反応」というのは随分身勝手な解釈であり、このことからもこの法律の意図が見抜けると思います。

 7月15日には心神喪失者医療観察法が施行されました。10月末までに85件の適用申請があり、決定したのは24件で、入院18件、通院3件、「治療せず」2件、却下1件のようです。入院治療施設の整備が遅れており、11月末では全国で2ヶ所だけでしたが、12月1日より愛知県下の国立病院でも受け入れることになったようです。これは既存の病棟を改築して入院させる暫定的な措置で、来年10月までに新入院病棟を完成させる予定ですが、これには近隣住民の他にこの法律そのものに異議を唱える患者団体、市民グループも強く反対しており、今後の成り行きに注目しています。

 最後に障害者自立支援法ですが、8月の衆議院解散で一度廃案になったものの、ほとんど手直しされることなく特別国会に再上程され、10月31日成立しました。施行は来年4月であり、細部や運用の仕方等については今後政省令で決められます。精神科通院公費負担については当初の案より「重度かつ継続」(白帝ニュース4月号参照)の適用範囲が拡がり、うつ病、依存症、脳器質性精神障害等も対象になり、現在「32条」を利用している方はほとんどそのまま移行できそうです。(ただし負担は10%になります)。これまでの応能負担(支払い能力に応じて費用を負担すること)から原則1割の応益負担(受けるサービスに応じて費用を負担すること)へと大転換されますが、このような制度が最もふさわしくない障害者医療福祉にまで「受益者負担」を求めることは、医療福祉に限らずあらゆる分野で「受益者負担」の原則が推し進められることを意味する訳で、「社会的弱者」と言われる人達の生活は一層苦しくなり、格差はますます拡がるでしょう。

 以上一年間を振り返ると犬山病院においては新しい法律の影響も少なく、比較的平穏な一年でしたが、来年は4月に診療報酬改定、改正精神保健福祉法の施行、障害者自立支援法の施行等が重なり、大変な年になりそうです。診療報酬改定については、財務省サイドは本体で3〜5%の大幅削減を求めており、(12月号発行時には決定していると思いますが)前々回の2.7%を大幅に上回る削減は避けられない情勢にあります。精神保健福祉法の改正では、「32条」が廃止されて障害者自立支援法に移行され、自己負担は10%になり、いずれ社会復帰施設の利用料も必要になります。どうやら来年は、小泉構造改革が医療福祉に及んで、再び病院経営や患者、家族の皆様の生活を直撃する年になりそうです。

(白帝ニュース平成17年12月)


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